「北海道ガーデンショー2015大雪」の開幕
2015年2月のJCAP7 Newsで紹介した北海道ガーデンショー(HGS)大雪は、 この5月30日に開幕しましたが、この機会にJCAP7は6月末にHGSの見学会を実施し、大雪山カムイミンタラ、大雪森のガーデン、そして上野ファームを訪問しました。
6月末は、北海道の花暦で言うと美しい新緑の季節ですが、カムイミンタラでは雪渓が残っていて高山植物を愛でるには少し時機が早かったようです。
「大雪森のガーデン」では初夏の花が咲きだし、「人生の旅路」というテーマの庭やコンペティションガーデンは美しく仕上がっていました。ドレスガーデンカンテも、いよいよ花の盛りを迎えようとしており、HGS大雪を見に行くにはこれからが絶好の時期と言えます。
最後に訪れた[上野ファーム]では、これまであった2000坪に、HGS2105大雪山を機に更に2000坪を加え、「ノームの庭」を増設しました。この4000坪の庭は北海道らしさを大切にしたイングリッシュガーデンで、周到に設計された庭には色とりどりの花が咲き乱れ、その美しさに心を奪われました。しかもこの4000坪の広大な庭を小柄な上野砂由紀さんとお母さんの2人で手入れしていると聞き、更に驚きました。
ドレスガーデンカンテ、裾まで花が咲き乱れていました。今はもっと華やかに咲いていることでしょう。写真はこのHGSのディレクターである高野文彰さん。
JCAP7スタッフと「ノームの庭」をバックに上野砂由紀さんと。この広大な上野ファームをお母さんと2人、“女手二つ”で管理しているそうです。
7月から8月にかけては北海道ガーデンショー2015大雪が、もっとも華やかなシーズンを迎える季節です。是非この機会に北海道の美しいガーデンを訪ねてみてはいかがでしょうか。なお、ガーデンショーは10月4日まで開催しており、この時期の北海道もまた違った趣があり、秋に向かって紅葉が始まり、植物の実が色づく季節で、秋ならではの鮮やかな花と、落ち着いた葉色のコントラストが味わえる季節とのことです。
次に、JCAP7のメンバーの高野ランドスケーププランニングの会長であり、このHGS大雪の名誉ディレクターでもある高野彰さんより、HGSの由来、概要について以下のお言葉を頂きました。
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1.北海道ガーデンショーの歩み
北海道におけるガーデンムーブメントは、2004年の「ガーデンアイランド北海道」と言う市民運動からスタートし、この時100を越える北海道の庭園が情報ネットワークを構築しました。
その中から2009年には7つの庭園が連携し「ガーデン街道」としてツーリズム市場を開拓し、3年間で35万人から55万人へと観光客を増やしました。この成功によって、庭園=ガーデンが北海道観光の柱になると考え、更に大きな柱として2012年に第1回ガーデンショー、「十勝千年の森」を開催し、これも20万人の参加者を集めて高い評価を受けました。運営方針として、北海道内で会場を移動して開催する事により、新しい土地に美しい庭園が誕生し、北海道全体に庭を愛する人々の想いが広がるように努めました。 -
2.北海道ガーデンショー2015大雪
北海道ガーデンショー2015大雪はその想いを引き継ぎ、上川町の「大雪森のガーデン」を主会場に、「大雪山国立公園」のお花畑、「上野ファーム」を舞台に開催されています。
- 大雪山国立公園
- 大雪山を彩る一面のお花畑はその美しさからアイヌの人々から「カムイミンタラ」「神々の遊ぶ庭」と呼ばれております。この自然がデザイナーの庭を皆様に楽しんで頂くと共に、人間が自然をコントロールして庭を創る意識から一歩身を引き、謙虚な気持で自然と庭を感じて頂きたいと考えております。季節毎に咲き乱れる花々を追って体力に合わせた大雪山でのガイドツアーをお楽しみください。
大自然がデザイナーのカムイミンタラは、これから秋になると日本一早い紅葉を楽しむ事ができます。木々の紅葉だけでなく、チングルマなど草花達の美しい紅葉も楽しむ事ができます。 - 大雪森のガーデン
- 人口4,000人の小さな町、上川町の大きなチャレンジです。この主会場には3年かけて育てて来たテーマガーデンと,招待作家による3つのデザイナーズガーデン、100を越える応募の中から選ばれた6つのコンペティションガーデンがあります。それぞれ趣の異なった庭をお楽しみ頂けます。
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ドレスガーデンカンテは今回のガーデンショーを象徴するデザイナーズガーデン。オープニングでは北海道知事もカンテに立ち、大雪山を眺め、思いを馳せていました。
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初めての常設展示作品「森の木琴」。ガーデンショーオリジナルの木玉を落とすと、バッハのプレリュードが森の中に響き渡ります。
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マレーシアから招待したLim氏の作品「Journey of Life」。ガーデンの中を一周すると、草花の色や形の違いで、人の一生を旅する事ができる体験型のガーデン。
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森の中にミラーバルーンが浮かび、祝祭を表現したコンペティションガーデン作品「祝祭の日」。唯一海外から選ばれたコンペティションガーデン作品
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森の中にうねるようにテーブルが広がる「森の食卓」。食べられる植物が植えてあり、そこに集まる小動物達と宴をする事ができます。
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お盆すぎまで、丘の上一面にひまわりが広がり北海道らしい雄大な花畑を楽しむ事ができます。
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- 上野ファーム
稲作農家であった上野さん一家が米を買いに見えるお客様をもてなすところからスタートしました。イギリスでガーデニングを学んだ上野砂由紀さんとご両親の家族が、手作りで創りあげてきた北海道を代表する美しい庭です。
写真は上野ファームを代表するミラーボーダーガーデン。上野さんの愛情のこもった管理によってすくすくと育った草花達が、四季を通じて違った姿を見せてくれます。
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3.北海道ガーデンショーの特色
- じっくり楽しむ。
- 通常2週間程度で短期開催の後スクラップとなる消費型のガーデンショーが多い中それらとは異なり4ヶ月にわたりじっくり春、夏、秋と季節によって表情を変えるガーデンショーで招待作家の庭は後世まで残して行く事を目指している。
- 北海道ならではのガーデンショー
- 大雪山の雄大な風景を背景にランドスケープとガーデンが融合する北海道ならではの雄大なガーデンショー。
- 庭園文化の発信
- 庭を愛でると同時にお茶会、音楽等多くのイベントプログラムを催し庭での営みを楽しむ、又「ガーデン アカデミー」を企画し世界的に著名なパスカル ガルブ氏(仏)、パトリック ブラン氏(仏)ファーガス ガレット氏(英)等を招聘し、北海道庭園文化の発信に務めます。
- 町民にとって意味のあるガーデンショー
- 多くのガーデンショーは外部からのお客に焦点を当てて企画運営されています。ここでは「上川町民にとってのガーデン」と言うコンセプトで大切に運営し、今後とも長期にわたって地域の方々に愛されるガーデンとなることを目指します。
- 国際的評価
- このガーデンショーは開催に先立ち、カナダトロントで国際ガーデンツーリズム・ネットワーク連盟よりGarden Festival of the Yearとして表彰されました。すなわち、今年世界中で開催されるガーデンショーの中でもっとも注目されるガーデンショーとしての評価を得ました。
このガーデンショーは大規模な民間スポンサー、国などの行政期間からの支援がある訳ではなく上川町予算と入場料収入や企業協賛を財源として実行委員会方式で進めております。
北海道ガーデンショー(HGS)に、今後より多くの方々がおいで下さるのを心よりお待ち致しております。
高野ランドスケープ プランニング会長
北海道ガーデンショー名誉ディレクター
高野文彰